日本企業の87%が、ChatGPTのような文章や画像を自動で作り出すAI技術——生成AIを使い始めている。だが「期待を大きく上回る成果が出た」と答えた企業は、たった9%だ。PwCジャパンが6月10日に公表した国際比較調査が、この数字を突きつけた。
PwCが示した日本企業の現在地
87%到達、先進国並みに
PwCジャパンが2026年6月10日に公表した「生成AIに関する実態調査2026春」は、日本・米国・英国・中国・ドイツ・韓国の6カ国の企業経営層・担当者を対象にしたオンライン調査だ。
日本企業の生成AI活用・推進率は87%に達した。前年比11ポイント増で、米国(90%)や英国(89%)とほぼ並ぶ。導入という点では、日本は先進国と肩を並べる水準まで来た。
9%という数字
ところが「期待を大きく上回る効果があった」と答えた日本企業は、わずか9%にとどまった。6カ国中、最下位だ。米国では同じ問いに38%が「そうだ」と答えている。導入率はほぼ並んでいるのに、成果の実感は4倍以上の差がある。
この差の背景を示すデータがある。生成AIの効果を「評価できていない」と答えた日本企業は13%。米国ではこの数字は0%だ。また、生成AIで得た成果を従業員の給与アップや顧客への値下げという実際のお金の動きにつなげている企業の割合も、日本は40%で米国75%の半分程度にとどまる。
米国・英国では約半数の企業が生成AIを「業界を根本から変えるチャンス」と見ている一方、日本では「自社ビジネスへの脅威」と感じる企業の割合が前年から大幅に増えた。PwCの調査が示した日本企業の現在地は、そういう場所にある。
成果を出した企業は何が違うか
成果を出している企業は、実際にいる。
PwCのレポートが事例として紹介するのは、こんな企業群だ。NECは、1件あたり約22時間かかっていた特許調査業務に生成AIを組み込み、3時間まで縮めた。セブン-イレブン・ジャパンは商品企画のプロセスに生成AIを導入し、数カ月かかっていた期間を数週間に短縮した。JR西日本カスタマーリレーションズでは、コールセンターのオペレーターが応対後に行う要約・記録作業の時間を最大54%削減している。
これらの企業に共通しているのは、会社全体にぼんやり広げるのではなく、特定の業務にがっちり組み込み、効果を数字で確認していることだ。だが、PwCの調査でこの側にいる企業は9%にとどまる。
「とりあえず導入した」時代の終わり
87%が使い始め、9%しか成果を得られていない——この非対称な数字は、次のフェーズがすでに始まっていることを示している。「どの会社も導入した」段階から、「使って成果を出せるかどうかで企業が分かれる」段階へ。成果を測れていない企業と、測って次の手を打っている企業の間にある差は、これからさらに開いていく構造が出来上がっている——調査の数字はそう示している。
