ゴールドマン・サックスの調査部門が、AI関連ハードウェア市場の売上高が2026年末までに7,000億ドル(約105兆円)を超えるとの予測を発表した。大手テック企業によるAIインフラへの巨額投資が背景にある。
AI関連ハードウェア市場、2026年に105兆円規模へ
日本のGDPの約2割――数字の大きさを把握する
ゴールドマン・サックスの調査部門は、AI関連ハードウェア——AIの計算処理に使う半導体やデータセンター設備、電力インフラ——の市場規模が2026年末までに7,000億ドル(約105兆円)を突破すると予測した。日本のGDP(国内総生産)の約2割に相当する規模だ。
この予測を裏付けるのが、大手テック企業の投資計画だ。ウォール街のアナリスト予測によると、クラウドサービスを手がける主要企業が2026年に投じる設備投資の合計は5,270億ドルに達する見込みだという。
では、なぜそこまで急成長するのか。背景にあるのは大手テック企業の桁違いの投資と、AI利用者の急増だ。
なぜ2026年にこの規模に達するのか
BigTechの設備投資拡大と推論需要の急増
ChatGPTに質問を投げかけるたびに、データセンターのサーバーが大量の計算処理を実行する。この「使うたびに走る計算」を推論と呼ぶ。利用者が増えるほど推論の回数が積み上がり、それを支えるハードウェアの需要が雪だるま式に膨らむ——これが市場拡大の核心にある構造だ。
その需要を受け止めようと、大手テック企業は設備投資を急拡大させている。Amazon(AWS)、Microsoft、Googleなど主要クラウド企業が2026年に投じる設備投資の合計は、ウォール街の予測で5,270億ドルに達する見込みだ。
米国企業のAI導入率は現在18.9%にとどまっており、半年以内に22.3%まで上昇する見込みだとU.S. Census Bureauの調査は示している。従業員250人以上の大企業に限れば35%を超えるが、中小を含めた全体ではまだ5社に1社にも満たない。普及はこれから本番を迎える段階だ。
GPU・データセンター・電力インフラへの需要集中
需要の広がりは半導体(GPU)だけにとどまらない。GPUとはAIの計算を担う専用チップのことで、推論需要の急増とともにデータセンターの建設ラッシュが加速し、その運営に必要な電力需要も急膨張している。
Brookfield Renewableは、MicrosoftやGoogleなどと約13.5ギガワット規模のクリーンエネルギー供給契約を結んでいる。13.5ギガワットは数百万世帯分の電力消費に相当する規模で、AIデータセンターがいかに電力を必要とするかを端的に示す。中でもいま最大の課題となっているのが電力だ。
この予測が意味すること
AIの影響はIT業界を超えてインフラ全体に及んでいる。ゴールドマン・サックスの予測は、こうした変化を織り込んだ上での数字だ。この予測が持つ意味を3点に整理する。
- 予測を出した組織の重み――ゴールドマン・サックスは世界最大級の金融機関であり、その調査部門のレポートは年金基金や大手ファンドなど機関投資家の投資判断に直接影響する。「7,000億ドル」という数字は予測であると同時に、巨額の資金をAI関連銘柄に向かわせる引力を持つ。
- 普及の伸びしろ――米国企業のAI導入率はまだ18.9%にとどまり、市場はいまだ拡大の初期段階にある。
- 恩恵を受けるのは半導体メーカーだけではない――クラウド大手、データセンター建設会社、電力会社まで、AIのサプライチェーン(供給網)全体にビジネス機会が生まれている。
ただし、強気一色ではない。ゴールドマン・サックス自身が2023年に「AIは投資に見合うリターンをもたらすか」と問う懐疑的なリポートを公表していた。同じ組織が3年足らずで強気予測に転じたことは業界の空気の変化を示すが、7,000億ドル市場が本当に実現するかは、企業がAIから具体的な収益を引き出せるかどうかにかかっている。
ゴールドマン・サックスの強気予測は、企業がAIから具体的な収益を引き出せることを前提とする。AI導入率がまだ18.9%にとどまる現状は「伸びしろ」でもあるが、投資対効果が証明されなければ設備投資の拡大は失速しうる。恩恵はGPU・データセンター・電力インフラに及ぶ広範なサプライチェーン全体に及ぶが、市場規模の実現可否は最終的に「AIで企業が稼げるか」という一点に集約される。
