生成AIを導入したものの、使いこなせる社員は一部だけ——そんな企業が多い。日本企業の約6割がすでに生成AIを全社導入済みにもかかわらず、現場では「使える人」と「使えない人」の差が広がり続けている。エクサウィザーズは2026年6月3日、この状況を変えるための新機能「カスタムエージェント」を、法人向けAIサービス「exaBase生成AI」(エクサベース生成AI)に追加した。プログラミングの知識がなくても、自社の業務手順を覚えた専用AIを作れる。それが今回の発表の核心だ。
ノーコードで作れる業務AI
カスタムエージェントとは、その会社のやり方で動く「自分たち専用のAI」だ。
「エージェント」というのは、ChatGPTのように質問に答えるだけのAIより一歩踏み込んだ仕組みを指す。特定の仕事を任せると、あとは自律的に動いてくれる。社内マニュアルや判断基準を読み込ませることで、汎用のAIではなく、自社の文脈で答えを返すAIができあがる。コードを一行も書く必要はなく、ブラウザ上の操作だけで設定が完結する。
どんな場面で使えるか。営業マネージャーが「自社の提案フォーマットに沿って資料準備を手伝うAI」を作るケースがある。ベテランが長年かけて磨いた提案のノウハウをAIに移し込み、チーム全員が同じ水準で動けるようにする。
AIが作り方を手伝ってくれる
ノーコードで業務AIを作れるツールは、これまでにも存在した。それでも多くの人が「AIに何を教えればいいか、そもそも分からない」という壁を越えられなかった。
カスタムエージェントはその一歩手前から手を貸す。今回の目玉のひとつが「エージェント自動生成機能」だ。「新入社員の質問に答えるAIを作りたい」と自然な言葉でざっくり伝えるだけで、AIが用途を読み取り、回答のスタイル・対象とする情報の範囲・想定される質問のカテゴリといった設定項目を自動で埋めてくれる。プロンプト——AIへの指示文——を巧みに書くスキルは問われない。「こういう仕事を任せたい」という意図さえあれば、設定は前に進む。プロンプトの腕前は関係ない。
共有とマイ、2種類の使い方
作ったエージェントには2通りの使い方がある。「共有エージェント」として社内全員に展開するか、「マイエージェント」として自分専用に使うかだ。
ベテランが持つノウハウを会社全体の武器にしたければ、共有エージェントとして配布する。自分の仕事スタイルに合わせた個人の道具が欲しければ、マイエージェントとして手元に置く。どちらを選ぶかは、作った人が決める。
ベテランが辞めても業務は止まらない
営業マネージャーが自分の提案ノウハウをエージェントに教え込み、チーム全員に配る。担当者ごとの提案品質のばらつきが消え、ベテランが属人的に抱えていた知識がチームの共有財産になる。エクサウィザーズが公表した導入事例によると、名古屋鉄道では業務AI活用により年間500時間の業務時間を削減したという。「あの人に聞かないと分からない」が減った積み重ねだ。
どの職場にも、「あの人に聞けば分かる」という人間がいる。長年かけて積み上げたノウハウは、頭の中にあってマニュアルには残っていない。その人が休めば仕事が止まり、異動や退職があれば組織全体がダメージを負う。カスタムエージェントが向き合っているのは、この構造だ。
ベテランが自分の判断軸や手順をエージェントに教え込んでおけば、その人が異動しても退職しても、エージェントは残り続ける。知識は個人の記憶から組織の仕組みへと移る。ただし、そのためには前提がある——ノウハウをどれだけ言葉にできるかだ。暗黙知の言語化が、実際には最初の壁になりうる。
チャット型から業務代行型へ
「質問すれば答えてくれる道具」から、「仕事を代わりにやってくれる存在」へ。カスタムエージェントが体現するのはその移行だ。同社の発表によると、2026年1月時点でexaBase生成AIは1,200社を超える企業・10万人超に使われている。個別企業の実験ではなく、国内の法人向け生成AIアプリケーションで市場シェア1位を持つプラットフォームで起きている変化だ。
これまでの法人向け生成AIは、人間が問いかけるたびに答えが返ってくる構造だった。指示の上手い人は使いこなせた。そうでない人は使いこなせなかった。カスタムエージェントは、「なにを聞かれるか」を待たずに、設定された仕事を自律的にこなす。入力のたびにプロンプトを考える必要がなくなる。
まず試せる10種類のプリセット
カスタムエージェントを自作する前に、まず使ってみる設計にもなっている。すぐに業務で試せる10種類のプリセットエージェントが最初から用意されていて、追加の申し込みは必要ない。
たとえば調査系のプリセットなら、テーマを入れるだけで関連情報をまとめた下地を作ってくれる。資料作成系なら、ラフなメモを渡せば構成の整った文書に仕上げてくれる。どれも「AIに何を頼めばいいか分からない」人が最初の一歩を踏み出せるよう設計されている。使いながら「こういう仕事が任せられるのか」という感覚をつかんでから、自社専用のエージェントを作る流れだ。
既存ユーザーへの追加申し込みは不要で、料金は1ユーザーあたり月額400〜500円程度の加算で済む。「使える人が使う」状態から「仕組みとして動く」状態へ。その転換に踏み出すコストとしては、抑えられた設定だ。
