ChatGPTといえば、画面の前に座って質問を打ち込み、返ってきた答えを読む——そういう使い方しか思い浮かばない人がほとんどだろう。実際、これまでのChatGPTはまさにそういうものだった。あなたが話しかけなければ、何もしない。
OpenAIは2026年4月22〜23日、その前提を覆す新機能「Workspace Agents」を発表・公開した。
Workspace Agentsは、ユーザーがパソコンを閉じた後もクラウド上で動き続ける。「毎週金曜日の午後5時に、今週の売上データをまとめてSlackに投稿する」——そういった指示を一度与えておけば、あとは何もしなくていい。あなたが会議に出ていても、外出していても、寝ていても、ChatGPTはスケジュール通りに仕事を実行する。
OpenAIは機能発表と同時に、自社での活用実態も公式ブログで明かした。営業リードの選別、社内フィードバックの振り分け、報告書の作成といった、本来なら数日がかりになるルーティンワークをWorkspace Agentsに任せているという。機能の発表と同時に自社での活用を明かしたのは、これが机上の話ではないという意思表示でもある。
具体的に何を自動実行できるか
メール送信もカレンダーも自動化
これまでのChatGPTは「読む」道具だった。調べて答えを返してはくれるが、そのメールを送るのも、カレンダーに登録するのも、Slackで共有するのも、人間が自分でやるしかなかった。
Workspace Agentsはその一線を越えた。メールの送信、GoogleカレンダーやOutlookへの予定登録、Slackへの投稿——「書き込む」作業まで、AIが代わりに実行する。Slack、Google Workspace、Salesforceといった、多くの職場で日常的に使われているツールと連携して動く。
5つの標準テンプレートを用意
初めて使う人が戸惑わないよう、OpenAIはあらかじめ5種類のひな形(テンプレート)を用意した。
ひとつは「営業支援」テンプレートだ。見込み客の情報をウェブで調べ、その相手に合わせた営業メールの下書きを自動で作る。「誰にどんな文章を送るか考えて一件ずつ書く」という、時間のかかる作業を肩代わりする。
もうひとつは「社内申請の処理」テンプレートだ。社員が「このアプリを使いたい」と申請すると、社内規定と照らし合わせて自動で判断し、ITチームへの依頼まで送る。申請を受け付ける担当者の仕事の一部をAIが引き受ける形だ。
ほかにも3種類のテンプレートが用意されており、いずれも「定期的に発生するが、考えるより手を動かすことが多い」種類の仕事に的を絞っている。
これらをゼロから自作することもできる。方法は「毎週月曜の朝、先週の問い合わせ件数をまとめてSlackに送って」と日本語で書くだけだ。プログラミングの知識は一切いらない。
企業が気にする制御とセキュリティ
メールを送り、カレンダーを書き換え、Slackに投稿する——ここまで読んで「AIに勝手にやられたら怖い」と感じた人は、正直な反応をしている。OpenAIもその問いを想定した上で、Workspace Agentsを設計している。
触れるデータの範囲を管理者が指定できる
企業でWorkspace Agentsを使う場合、IT管理者がAIの「行動範囲」をあらかじめ決める。「このAIはSlackとGoogleカレンダーにしか触れない」といった形で、アクセスできるツールやデータを細かく絞り込める。役職や担当ごとに触れる情報の範囲を制限する、企業のセキュリティ管理でよく使われる方式だ。
AIが指定範囲の外に出ることはない。「関係ないファイルを消された」「契約相手に誤送信された」といった事態は、仕組みの上で起きない設計になっている。
Enterpriseプランでは、AIとのやり取りで使ったデータがOpenAIのモデル学習に使われないことが法的に保証されている。社内の機密情報や顧客データを扱う企業にとって、この点は導入の前提条件になることが多い。
重要アクションは実行前に人間が承認
AIが自律的に動くといっても、なんでも勝手に実行するわけではない。パスワードの入力や決済のような認証・金銭に関わる操作が必要になった場面では、AIは自動的に処理を止め、人間に判断を求める。外部の第三者へのメール送信や、社外サービスへのデータ書き込みなど、取り消しが難しいアクションも同様だ。
逆に言えば、社内ツールでの情報集約や定型レポートの作成といった、影響範囲が限定されたタスクはAIが自律的に完遂する。人間の承認が必要な場面と、AIに任せきりにできる場面——その線引きがWorkspace Agentsの設計に組み込まれている。
対象プランと料金
Workspace Agentsは2026年4月22日から提供が始まった。ざっくり言えば、個人で使うならPlusプラン、会社や学校で使うならBusiness以上が対象になる。
現時点は「リサーチプレビュー」と呼ばれる試験提供期間で、Business・Enterprise・Edu・Teachersの各プランであれば2026年5月6日まで追加料金なしで試せる。月額20ドルのPlusプランは無料試用の対象外だが、一部機能を月40回まで使うことはできる。ただし、チームで同じエージェントを共有する機能は使えない。
| Plusプラン | Business・Enterprise・Edu・Teachers | |
|---|---|---|
| 月額料金 | 20ドル | 既存プラン料金 |
| 試用期間中(〜5/6) | 月40回まで利用可 | 追加料金なしで利用可 |
| チーム共有 | 不可 | 可 |
| 5/7以降 | 従量課金(クレジット制)※詳細未発表 | |
5月7日以降は、使った量に応じた従量課金に切り替わる。「クレジット制」と呼ばれる仕組みで、エージェントが動くほど消費が増える形だ。ただし、実際にいくらかかるのかという料金の詳細は、現時点でまだ発表されていない。
導入を検討する企業にとって決定的な情報——「いくらかかるのか」——がまだ出ていない。費用対効果の計算ができるのは、5月7日以降の料金が明らかになってからだ。
